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相続手続きをしないままでいるとどうなるのか

  • 文責:所長 弁護士 足立博之
  • 最終更新日:2025年12月15日

1 口座凍結

金融機関は、死亡を知ると、口座を凍結します。

一部の相続人が他の相続人の同意なく預金を引き出したら、トラブルの元だからです。

凍結により、口座から預金は引き出せず、入金もできず、振替や引落もできません。

光熱費の引落ができなかったら、電気、ガス、水道が止められ、同居人は困るでしょう。

もっとも、近時の改正により、一定額については、他の相続人の同意なく、引き出せるようになりました。

遺産分割は何年も揉めることがありますが、それが解決するまで葬式代も引き出せないのは不都合だからです。

2 遺産を処分できない

例えば、故人の不動産は売却も抵当権の設定もできません。

相続手続きをしないまま放置していれば、相続人全員で共有している状態となるため、相続人単独では自由に処分できない、いわば塩漬け状態です。

売り時を逃しますし、不動産を担保にローンを組んで当面の資金需要に対応することもできません。

3 相続関係の複雑化

相続手続きを放置しているうちに、相続人のうち誰かが死亡して、また相続が発生することがあります。

孫、叔父、叔母、おい、めい…とどんどん相続人が増えていきます。

遺産分割の協議をするにも、当事者の頭数が増えるわけですから、その分、協議は難航します。

また、どこに住んでいるかわからない、連絡がつかない等という事態が出てきます。

相続人が死亡とまではいかなくても、時がたてば、認知症などになり、相続手続きが進めにくくなることもあります。

相続人の中に認知症などの方がいると、遺産分割協議をする前に、成年後見人の選任を家庭裁判所に申し立てることが必要になってしまうのです。

4 過料

令和6年(2024年)4月以降は、不動産(土地と建物)については、相続登記を3年以内にしないと10万円以下の過料が科されるリスクがあり、注意が必要です。

それまでは、登記申請を放置していることが横行しており、登記が明治時代のままなどという話も耳にしていました。

しかし、それでは、誰が今の所有者かわからず、道路を作ることも、空き家を取り壊すこともできません。

そこで、近時の改正により、過料という制裁によって、登記申請が義務化されました。

5 権利の消滅

権利には時効がありますので、放置していれば、権利が時効消滅するリスクがあります。

お金を払えというような債権も権利ですので、放置していれば、消滅します。

所有権のような物権も、誰かに時効取得されたら、反射的に権利を失う結果となります。

相続の場面では、遺留分侵害額請求権が該当し、放置していると、消滅してしまうことがあるため注意が必要です。

6 債務が膨らむ

遺産がプラスの財産だけならありがたいですが、残念ながら、マイナスの財産、つまり債務がある可能性があります。

放置していれば、遅延損害金はどんどん増えていきます。

そのうち、電話やショートメールで督促が自宅や勤務先に来ます。

なおも放置すれば、裁判を起こされ、給与の差押など強制執行されるリスクがあります。

また、相続放棄は相続人になったことを知って3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

放置していたら、相続放棄できなくなるのです。

故人が借金まみれだったら、相続放棄できないと、相続人が破産することにもなってしまいかねません。

7 延滞税

相続税の申告や納税が遅れると、延滞税などが加算されてしまいます。

また、税の分野では、税制改正が頻繁にあり、実務を支配する通達が次から次へと出されるため、放置している間に、適用されるルールは何かという大前提を把握することすら困難になってしまうことがあります。

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